英式バルブの空気圧は適正に保ってください。しかし、「適正」は測れないという不都合な真実。

2021.06.04

シティサイクルの空気圧をご存じ?

通勤や通学でシティサイクル(ママチャリ)を使われている方は、普段のタイヤの空気圧はどう管理していますか?

・行きつけの自転車屋さんにお願いしている
・自分で何となくやっている
・特に意識していない、最近入れた記憶が・・・
・自転車って空気いるの!?

など様々かと思いますが、とりわけ意識して「1か月に一度必ず入れる」など、きちんと管理できている方は多くはないのではないでしょうか?

そもそも、普段乗っている自転車に、どのくらいの頻度で、どのくらいの空気を入れたらいいのか、スラスラ答えられる人の方が少ないかもしれませんね。

 

結論から申し上げますと、シティサイクルに採用されているタイヤの場合、1か月に一度くらいの頻度で、空気圧はだいたい300kpa(約3.0kgf/平方cm)位で指定されていることが多いです。

適正空気圧はタイヤの側面に記載されています。

1か月に一度入れるのを推奨している理由は、パンクの原因の多くが空気不足によるためや、タイヤ、チューブの早期摩耗抑制、走行性能向上などメリットが多いからです。

頻度と空気圧量はわかりました!
しかし、正直数字がわかってもどうやって測ったらいいのかわからない!というのが本音ではないですか?

 

メーター付きのポンプがあったら入れられると思っても、実はそのままだと適正(タイヤ側面記載の指定空気圧)に入れるのは非常に困難なんです。

空気圧を保てと言っておきながら、数字で管理しようにもできないなんて・・・!

 

なぜ英式の空気圧管理が難しいかというと、シティサイクルに採用されるバルブは英式(ウッズバルブ)というタイプの構造に理由があります。

答え合わせ

その前に、ご自分が空気圧のメンテナンスができていたか、測定器具なしで確認する方法があります。

 

ちょっといじわるですが、それは・・・タイヤを外す時。
パンクした時とか、タイヤ交換した時ですね。
以前twitterでもご紹介しましたが、こんな状態になっているからです。

この黒いカス?粉?なんだかわかりますか?

 

空気圧が少ないと、タイヤ内部とチューブの間に隙間ができます。これが例えばブレーキの度に動いて擦れて、チューブのカスが発生します。
中には、これはチューブが不良だと思う人もいるようですが、摩擦により発生するので、どんなチューブにも起こりうることなんですね。

適正に空気が入ってれば、タイヤ内部に隙間がなく、チューブは動かないので、カスは発生しないです。画像の程度でしたら、まだ使えるかもしれませんが、こうなった場合、チューブは傷んでいるので交換を推奨しています。

 

カスが出ていなくても、スネークバイトと言って、蛇の噛み後のように、近い位置に穴が二つ空いている場合も空気圧不足が疑われます。
空気が少ないまま段差に突入して、タイヤが瞬間的に潰れ、ホイールとタイヤ(地面)にチューブが挟まれて穴が空いてしまいます。
リム打ちパンクとも言います。

比較的空気があっても、重量のある自転車や、荷物をたくさん積んでいる、高い速度で固いものを踏むと起こる場合もあります。

バルブの特徴と構造

さて、ちょっと逸れてしまいましたが、バルブの構造に戻ります。

自転車のバルブの構造は3種類あります。それぞれ特徴があり、自転車の種類や目的によって使い分けられています。

 

英式バルブ(ウッズ、ダンロップ)
特徴:主にシティサイクルに採用

仏式バルブ(フレンチ、プレスタ)
特徴:スポーツ車全般に多く採用

米式バルブ(アメリカン、シュレッダー)
特徴:一部MTBやBMXに採用

英式バルブ以外の詳しい説明は下記をご参照ください。

自転車チューブの種類と選び方

 
英式バルブ特徴  
長所
  • 国内で最も普及しているため、自転車屋さんなら基本どこでも空気の補充が可能。補修や関連パーツの入手も容易
短所
  • 構造上、空気が漏れやすい
  • 空気圧の調節が困難
  • 空気圧の計測ができない(困難)
  • 虫ゴム(バルブコア)が1年程度で劣化するので、定期的な交換が必要

 

英式バルブは、空気を入れると、バルブ入口から虫ゴムを押しのけてチューブの中に空気が入ります。(入れる時は圧がかかる)
反対に空気が抜けないのは、虫ゴムが弁となって、抜けようとする空気を邪魔するからです。

虫ゴム(バルブコア)を入れる際は、必ずバルブ本体の切り込みに合わせて挿入してください。

英式バルブの虫ゴム(バルブコア)を1年程度で交換するのも、下記のようにゴムだと劣化するので、隙間からどんどん抜けてしまうからです。
半年以上虫ゴムを交換していなくて、1-3日で空気が目に見えて減ると感じている方、または空気を入れても入れても一切入っていく感じがしないという方は、虫ゴムが劣化して隙間から空気が漏れている可能性があります。パンクの前に虫ゴム劣化を疑ってください。

虫ゴムを交換しようとして、バルブコアを抜いたら、そもそもゴムが付いていなかった場合、バルブ本体の側面にゴムが張り付いている場合があります。

長時間放置しすぎて、劣化したゴムがバルブ本体に張り付いてしまうんですね。

そうなると、虫ゴム(バルブコア)を新たに入れようとしても、張り付いたゴムが邪魔をして、虫ゴム(バルブコア)が入っていきません。
「虫ゴムを交換したいのに、虫ゴムが入らない!」という方は、一度バルブ本体の中を見て、ゴムが張り付いていないかチェックしてください。張り付いていた場合は、つまようじなどで優しく取り除いてください。(そのままチューブの中に落とし込んでも問題ありません)

 

虫ゴムの交換方法は下記でご紹介しています
英式バルブの虫ゴム交換

ご不安な方や難しい場合は、お気軽に弊社店舗にご相談ください。

英式バルブが適正に空気圧を測れない理由

ちょっと実験してみましょう。

■実験方法
英式バルブコアを、虫ゴムと虫ゴム交換不要のスーパーバルブに変えて、下記方法で実施
1.計測できるバルブ(英式→米式バルブ化)し、10プッシュで何気圧入るか確認
2.指定空気圧(40PSI)まで何プッシュ必要か確認

■前提
米式バルブ
10プッシュ→15PSI
27プッシュ→40PSI

■結果

バルブコア:虫ゴム 空気入れ表示上の空気圧
2プッシュ 30PSI 
10プッシュ 40PSI 
20プッシュ 42PSI
27プッシュ 46PSI

 

バルブコア:スーパーバルブ  空気入れ表示上の空気圧
10プッシュ 15PSI
27プッシュ 40PSI

10プッシュ目 左:米式バルブ 右:英式バルブ(バルブコア:虫ゴム)

■結論
所有する自転車のタイヤ空気圧の誤差を認識していれば、英式バルブ(虫ゴム)でも適正に空気圧を測るのは困難だが、測れない訳ではない。(目安値としては有効)

意外にも、スーパーバルブは今回の実験においては米式バルブ化させたものと同じ数値でした。
全ての車種で同じ結果になるかはわかりませんが、スーパーバルブは虫ゴム交換不要以外にもメリットがあるのがわかりました。

英式は、実際に空気圧を測定できるのは、バルブの入り口付近の圧(負圧)になり、タイヤの実際の空気圧よりも高めに表示される(=実際のタイヤの空気圧は表示より低い)というのがわかりました。

バルブコアが虫ゴムだと、チューブに入れない状態の、ワンプッシュ目ですでに30PSI近い数字。

自転車の空気圧は、確かに指定空気圧通りが望ましいのは確かですが、レースに出る訳でもなく普段使いではちょっと位(±5PSI)多い、少ない程度で不具合が出るものではありません。
また、空気圧ゲージも、ある程度値段などにもより、個体差もあるもののため、そこまでシビアにコントロールする必要はないと感じます。

一度、数字通りの空気圧を知り、以後は手の感覚で適正に近い空気圧を入れてあげれば、このまま英式バルブのままで問題ないとも思います。
しかし、手の感覚が不安な方や、虫ゴムが劣化するごとに交換するのが面倒、適正に管理したい方は、スーパーバルブに変更したり、後でご紹介する米式バルブ化させるツールへの変更をおすすめします。

適正に空気圧を測る方法は?

先ほどご紹介した、米式バルブ化させるツールへの変更は、下記のアイテムを使用します。

パナレーサー[PANARACER]
ACA-2 エアチェックアダプター 2個セット 英式チューブを米式口金に変換するアダプター
詳細はこちら

ゲージ付きの空気入れなら空気圧を測ることができるようになるので、これならいいですよね。
ゲージ付きの空気入れを持っていない方は、下記のタイプなら、必要な空気圧が一目でわかります。

パナレーサー[PANARACER]
ACA-2-G ゲージ付きエアチェックアダプター 2個セット 英式チューブを米式口金に変換するアダプター
詳細はこちら

インストールする場合は
①バルブキャップを外し、袋ナットを緩めます

②虫ゴムを抜きます
プシューと勢いよく空気が抜けますが問題ありません

③ACA-2 エアチェックアダプターの弁を入れます

④ナットをつけ空気を入れます
空気を入れる際は、最初の2-3プッシュは少しだけタイヤを浮かしてから行うと、タイヤへの噛み込みを防げてより安心です

ただ、このバルブの注意点としては、空気を抜く際に、弁が勢いよく飛んでしまうことがあります。
結構小さいので、なくなると大変です。
あまり全部一気に空気を抜くケースは少ないと思いますが、作業の際はご注意ください。

さらに、もしパンクが怖い方は、バルブを替えるタイミングで、パンク防止のシーラントを入れておくと安心です。一本で一台分(前後)入れられて、常に適正空気圧なら、タイヤ、チューブを交換するまでパンクリスクを軽減してくれます。

ご自分でやるのが不安な方は、店舗でもパンク防止剤注入承っていますので、ご希望の場合はお申しつけください。
こちらもタイヤ、チューブの寿命まで使えるので、できるだけタイヤ、チューブが新しい内に入れておくのがおすすめです。

ウェルドタイト[WELDTITE]
DR SLUDGE(ドクター スラッジ)パンク シーラント(3014)250ml
詳細はこちら

新型コロナウイルス感染症の影響で、今年も自転車に乗る方は多くなっていると報道されていました。
通勤や通学時、シティサイクルでもトラブルなく快適に、安心して乗るためにちょっとしたアイテムの追加をご検討いただけたら幸いです。

TEXT:toby