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ディスクブレーキスタートガイド


 
 

① ディスクブレーキとは?

ディスクブレーキと聞いて車やバイク(モーターサイクル)に使われているブレーキを思い出す方も多いと思います。自転車においても以前は競技用のマウンテンバイクなどに採用されていたディスクブレーキですが、今ではロードバイクでも多く採用されています。
これまで街乗りを目的とした自転車にはキャリパーブレーキやVブレーキなど車輪を直接ゴム製のブレーキシューで挟み込んでホイールの回転を止めるリムブレーキのタイプが多く採用されていましたが、近年では雨天時でも安定した制動力を発揮するディスクブレーキが様々な自転車にも採用されるようになってきました。 

 

② ディスクブレーキの特徴

→雨天時でも安定した制動力を発揮
車輪の外側にあるリムと呼ばれる金属部分をゴム製のブレーキシューで挟んで回転を止める、従来のキャリパーブレーキやVブレーキなどはリム部分が濡れた状態では著しく制動力が落ちることが多く、特に雨天時にはブレーキが効きにくいといったことが発生します。
それに対してディスクブレーキは車輪の中心部分に固定された金属製のローターと呼ばれる板を専用のパッドで挟んで車輪の回転を止めるため雨天時などでも安定した制動力を発揮します。

→軽い力でも制動力を発揮する
特に油圧式ディスクブレーキは、これまでのような金属製のケーブルで引っ張ってブレーキを動かすのではなく、オイルのチカラ“油圧”でブレーキを動かすためブレーキの引きは軽く、また倍力が働くので非常に軽い力で制動力を発揮でき、ケーブルの摩擦のような損失が少なく、非常に効率よく握った力を伝達できます。また、ブレーキホースの長さや取り回しと言ったことにも制動力は影響を受けません。

→愛車が汚れにくい
これまでのリムブレーキでは、ブレーキシューとリムが擦れあうことで、特に雨天時はリムが削れたカスなどが雨水と共に自転車のフレーム等に付着して、大切な愛車の汚れが目立っていました。しかし、ディスクブレーキではこのような汚れの原因となるカスの出る量が少ないため愛車への汚れの付着が少なくなります。

 

自転車にとって良い事づくしのディスクブレーキですが、これまでは部品代が高価だったこともあり、競技用の自転車をメインに使用されていました。しかし、最近ではディスクブレーキの性能はそのままに価格を抑えた製品も開発され、一般的な自転車にも採用されることが増えました。特にこれまではキャリパーブレーキやVブレーキが多く使われていたクロスバイクでもディスクブレーキをスペックした自転車を多く見かけるようになり、変則段数も増えタイヤの性能も格段に良くなったことで、今まで以上のスポーツ走行を可能としてくれます。
また、クロスバイクと言っても最近では通学や通勤など普段の移動手段として使用されている方も多いと思います。そういった方の多くは、雨の日でも自転車で移動するケースが多くなります。そんな時でもディスクブレーキが装着された自転車だと安全にスピードコントロールができるようになり、より安全な自転車ライフが楽しめます。
ココでは、そんなディスクブレーキの特徴や日々のメンテナンスなど、ディスクブレーキが装着された自転車に乗るにあたって知っておきたいポイントをご説明いたします。ブレーキはメンテナンスを怠ることにより、一歩間違えば事故につながってしまう可能性のある重要な部品のひとつ。その特徴をよく理解したうえで、定期的なメンテナンスで安全にご使用いただければ幸いです。

 

③ ディスクブレーキの種類について

自転車に使用されているディスクブレーキには、大きく分けて油圧式と機械式の2種類があります。

 

【オイルのチカラで動く油圧式ディスクブレーキ】


オイルの力を使ってブレーキキャリパー内部のピストンを動かし、パッドでローターを挟んで回転を止めるタイプ。
ブレーキレバーからブレーキキャリパーへ、そこに繋がるホース内も含めて専用のオイルで満たされています。小さな力で重いものを持ち上げる油圧ジャッキにも応用されているパスカルの原理を利用して、軽い引きで強くパッドをローターに押し付けて車輪の回転を止めます。
車のブレーキなどと同じで、ブレーキレバーを強く握ったからと言ってブレーキの効きが変わるのではなく、ブレーキレバーを動かした量によりブレーキの効き方が変化します。握力の弱い方や、乗車時間が長い場合など手に疲労が溜まることを抑えてくれるだけではなく、長期で安定した制動力を発揮します。

 

 

【ケーブルを引っ張って動く機械式ディスクブレーキ】


油圧式ディスクブレーキと違って、金属製のブレーキケーブルでキャリパー内のピストンを動かすことでローターにパッドを押し付け車輪の回転を止めます。
ブレーキレバー内の「テコの原理」によりケーブルを引っ張る量や力を調整しているため、油圧式と違ってレバーを動かす量だけでは制動力には直結せず、ある程度の握力を必要とします。また、油圧によってキャリパー内の左右にあるピストンを同時に作動させる油圧式に対して、機械式の多くはキャリパーの左右どちらか片側のみのピストンを動かす機構のシングルピボット式が多く採用されています。

 

④ ディスクブレーキの部品について

ここではディスクブレーキを構成する部品や名称をご説明します。
  • <<ブレーキキャリパー(油圧式)>>

    内部にはピストンがあり油圧で左右からピストンを均等に動かしている。ピストンにはパッドが付いており、ローターを左右からパッドで挟み込んで車輪の回転を止めます。

  • <<ブレーキキャリパー(機械式)>>

    キャリパー本体横のレバーをケーブルで引っ張って動かすことでキャリパー内部のパッドをローターに押し付けて車輪の回転を止めます。

  • <<ブレーキレバー(油圧式)>>

    油圧式ディスクの場合はブレーキレバーも専用のレバーになります。レバー内にもピストンがあり、そのピストンをブレーキレバーで動かすことで内部の油の力でブレーキキャリパー内のピストンを動かして車輪の回転を止めます。

  • <<ブレーキレバー(機械式)>>

    機械式ディスクブレーキにはVブレーキなどで使用するものと同じブレーキレバーが使用できます。

  • <<ブレーキオイル(またはブレーキフルード)>>

    油圧式ディスクブレーキを動かすために必要な専用オイル。DOTオイルとミネラルオイルの2種類があり、ブレーキメーカーごとに使用できるオイルが指定されています。それぞれ混ぜて使用することはできず、ブレーキオイルは適切な扱いをする必要があります。
    DOTオイル/ミネラルオイルともに、定期的(少なくても1年に一度程度)なオイル交換が必要です。

  • <<パッド>>

    ディスクキャリパーの中にあり、このパッドでローターを挟み込むことで車輪の回転を止めます。パッドにはレジンタイプとメタルタイプがあります。パッドはキャリパーの内部にあり外側からはパッドの減りに気づきにくいため定期的な点検ならびに交換が必要です。レジン/メタルともにローターとの相性があるので、それぞれのパッドに対応したローターを使用する必要があります。

 
  • <<ローター>>

    油圧式/機械式共にローターの互換性はあり、写真の真ん中にあるハブへのローターの固定方法によって種類が異なります。また、ローターのサイズ(直径)が数種類あり、フレームによって使用できるサイズが異なります。基本的にローターの大きさが大きくなればなるほど車輪を止める力は大きくなります。ローターも使用しているうちに削れてくるため定期的な交換が必要です。

  • <<ブレーキホース>>

    油圧式ディスクに使われブレーキレバーからブレーキキャリパーへとオイルを送り込むための油の通り道となります。
    レバー~オイルホース~キャリパー内に空気が入り込ませない必要がある為、油圧式ディスクは“エアー抜き”と呼ばれる作業が必要で、専門的な技術と知識が必要となります。オイル内部にエアーが混入した場合、握り心地が柔らかくなり最悪の場合はブレーキの制動力が落ちたり、ブレーキ使用時の熱により空気が膨張しベーパーロック減少が発生したり正常に作動しなくなる場合があります。

  • <<ブレーキケーブル>>

    機械式ディスクを作動させるためブレーキレバーからキャリパーに繋がる金属製のケーブルです。フラットハンドル用のレバーに使用されているブレーキケーブルと同じものが使用でき、比較的簡単に部品を入手することができるメリットがあります。ケーブルは金属製のため錆などによりブレーキの引きが重くなったり、突然切れてしまう可能性があるので、定期的なメンテナンスや交換が必要です。

⑤ それぞれのブレーキの「メリット」と「デメリット」

油圧式と機械式。それぞれのディスクブレーキにおいてメリットとデメリットがあります。
ここでは、そんなメリットとデメリットについても説明しておきますので、ぜひ自転車を選ぶ際の参考にしてください。
 

【油圧式ディスクブレーキの場合】

▶メリット
 ・油圧により軽い力で自転車を止めることができる。
 ・雨天時などブレーキが濡れた状態でも安定した制動力を発揮する
 ・ブレーキパッドが減っても自動的にブレーキレバーの引き代が調整される
 ・ブレーキケーブルを使用していないため錆びによる制動不良が発生しない
 ・ホースの取り回しがレバーの引きに影響しない
 ・リムの性能や歪みに影響しない
 ・太いタイヤでもホイールの脱着が容易
▶デメリット
 ・外観だけではブレーキオイルの劣化頻度が分からない
 ・ブレーキオイルの交換などメンテナンスに専門知識と工具が必要
 ・一般的に機械式ディスクブレーキよりも高価
 

【機械式ディスクブレーキの場合】

▶メリット
 ・雨天時などブレーキが濡れた状態でも安定した制動力を発揮する
 ・油圧式に対して整備が比較的簡単
 ・ホイールを外した際などピストンを押し戻す必要がない
 ・一般的に油圧式ディスクブレーキよりも価格が安い
▶デメリット
 ・ケーブルが錆びるとブレーキレバーの引きが重くなる
 ・油圧式ディスクに比べてレバーの引きが重くなり力が必要になる
 ・パッドが減ったりブレーキケーブルが伸びたりした際は引き代の調整が必要

⑥ ディスクブレーキのメンテナンスについて

ここまで読んでいただいた方は「ディスクブレーキって自転車に最適なブレーキシステム!」って思った方も多いと思います。
特に油圧ディスクに関しては少ない握力で安定した制動力が得られるため、自転車に最適なブレーキシステムです。
しかし、自転車は自分の命を預けて走る車両でもあります。もし「ブレーキが突然効かなくなったら⁉」と、想像しただけでも怖いですよね。
ディスクブレーキに限らず、ブレーキは自転車を止めたりスピードを調整したりと欠かせない重要な部品です。メンテナンスを怠れば本来の性能を発揮できないだけではなく、突然ブレーキが効かなくなることだってありますので、自転車専門店で定期的なメンテナンスを依頼して快適な自転車生活を送りましょう。また、普段の使用の中で異変を感じたらすぐに最寄りの自転車販売店で見てもらうようにしましょう。

ココではディスクブレーキの部品の交換時期やメンテナンスについてご紹介します。
 


●ブレーキオイル

ブレーキオイルはブレーキ内部にあり外から見ることができませんが、ブレーキ作動時の熱などにより必ず劣化します。
ブレーキの使用頻度によっても交換時期は異なりますが使用頻度が多い方は半年に一度、少なくとも1年に一度はブレーキオイルの交換を行いましょう。ブレーキオイルの交換にはエアー抜き作業が必須となり、専門的な知識や工具が必要ですので、自転車専門店に依頼しましょう。

 


●パッド

パッドは使用頻度により摩耗します。メーカーごとにパッドの厚みで交換時期が決められており、パッドを外してノギスなどで厚みを測定して交換時期を確認するか、1年に一度など定期的な交換がお勧めです。(写真左:交換必要なパッド、写真右:新品)

<ディスクパッドの交換時期目安> SHIMANOやTEKTROの場合=パッドの厚みが0.5mm以下になった時点で交換

 


パッドの残量を確認するための専用インジケーターも発売されています。

【Birzman Brake Pad Wear Indicator】

対応:
・SHIMANO / TEKTRO & TRP / HOPE : Min.TH 0.5 mm
・SRAM : Min.TH 3.0 mm
・MAGURA : Min.TH 2.5 mm
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パッドには油分が付着しないようにしなくてはいけません。音鳴りがするからと言ってパッドにオイルを吹きかけることは厳禁です。ブレーキが全く効かない状態になってしまいます。
パッドに油分が付着してしまった場合は、パッドの残量が残っていたとしても新しいものと交換しましょう。パッドに油分が付着したからと言ってパーツクリーナーなどの脱脂材をパッドに吹きかけることも厳禁です。パッドにパーツクリーナーの成分が沁み込み音鳴りの原因となります。
もし、油分が付着した場合はパーツクリーナー等の脱脂材ではなく中性洗剤などでパッドの表面を洗うことでブレーキの効きが改善される場合もあります。

 


●ローター

ローターは金属製ですが、長期間の使用により摩耗して薄くなってきます。薄くなることで剛性が下がりローターが歪んだり破損する可能性がありますので定期的な交換が必要です。パッドと同様にローターの摩耗限界数値が決まっているのでノギスで厚みを測定して交換時期を確認するか、2~3年に一度など定期的な交換がお勧めです。

<ローターの交換時期目安> SHIMANOやTEKTROの場合=ローターの厚みが1.5mm以下になった時点で交換

   


ローターの厚みを確認するための専用インジケーターも発売されています。

●【Birzman Rotor Wear Indicator】

対応:
・SHIMANO / HOPE (Φ180-205 mm) : Min.TH 1.5 mm
・SRAM : Min.TH 1.55 mm
・MAGURA : Min.TH 1.8 mm
・TEKTRO & TRP e-bike(TH 2.3 mm) : Min.TH 2.0 mm
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ローターもパッド同様に油分の付着は厳禁です。ローターの場合は油分が付着してしまった場合はパーツクリーナーのような脱脂材で油分を除去できます。その場合は必ず自転車から車輪を取り外し、パッドにパーツクリーナーが掛からない状態で作業を行いましょう。また、ローターに付着したパーツクリーナーが完全に乾いてからフレームに戻すようにしましょう。
 

⑦ ディスクブレーキに関するQ&A

Q、ブレーキを掛けた時に「キーキー」などの音が鳴ります。
A、パッドやローターに油分などが付着している可能性があります。油分を綺麗に除去するか新しいパッドとローターに交換が必要です。

Q、走行中にブレーキを掛けていないのにブレーキ部分から音が鳴ります。
A、外部からの衝撃によりローターが歪んでいるか、キャリパーの固定位置がずれた可能性があります。最寄りの自転車専門店で調整を行ってもらいましょう。

Q、機械式ディスクブレーキのキャリパー部の動きが悪いので注油をしたいのですが市販のスプレーオイルなどで良いでしょうか?
A、パッドとローターが接する部分に油分が付着するとブレーキの制動力が著しく低下します。絶対に注油は行わないでください。動きが悪いなど気になった時は最寄りの自転車専門店にご相談ください。

Q、油圧式ブレーキのオイル交換を自分でやってみたいのですが、ブレーキ用のオイルであればどれを選んでも大丈夫ですか?
A、各メーカーにより指定のオイルが異なります。また、DOTオイルとミネラルオイルには全く互換性はありません。エアー抜きの作業も専門の知識が必要となりますので、心配な方は最寄りの自転車専門店で作業をご依頼ください。

Q、ディスクブレーキのローターは素手で触っても大丈夫でしょうか?
A、長い下り坂など長時間ブレーキを掛け続けた直後のローターは非常に高温になっていることがあり火傷する恐れがありますので不用意にローターを素手で触ることはやめましょう。また、手に付いた油分によりブレーキの制動力が低下する可能性もありますので、どうしてもローターに触れなくてはいけない時は作業用の手袋を装着して触るようにしましょう。

Q、ディスクブレーキのメンテナンスのタイミングや頻度はどれぐらいですか?
A、少なくとも1年に一度は自転車専門店での定期的なメンテナンスをお勧めします。パッドは厚みが0.5mm、ローターは厚みが1.5mmになれば、それぞれ交換が必要となります。油圧式ディスクブレーキは外見では判断が難しいですがオイルも劣化するため、総距離にかかわらず1年に一度は交換するようにしましょう。自転車専門店での定期的なメンテナンスを行うことで不意なトラブルを未然に防ぐことができ安全にご使用いただけます。

Q、ディスクレーキのメンテナンスを自分で行うことは可能ですか?
A、ディスクブレーキに限らずブレーキは自転車のスピードコントロールだけでなく“止まる”ために非常に重要な機構になります。必ず自転車専門店で定期的なメンテナンスも含めてみてもらうようにしましょう。