【MiNERVA-asahi】全日本選手権の前哨戦。JCXシリーズ 第5戦レポート

2020.11.27

最強メンバーがそろった前哨戦。全日本選手権での活躍を目指す折橋選手からのレースレポート!

11月22日に滋賀県で行われた「JCXシリーズ 第5戦」にあさひ公式レーシングチーム「MiNERVA-asahi」の折橋選手(C1)が参戦しました。全日本選手権前の最後のレースとなる今回は、主要選手がほぼそろい、まさに前哨戦となるレースとなりました。

レース会場は琵琶湖のほど近く、滋賀県高島市にあるマキノ高原が舞台です。

 

冬場はスキー場のため雪景色にもなる会場ですが、ここ最近続いている温暖な気候のおかげで今年のコースコンディションは落ち着いているようでした。

関東勢は前日入りして準備を整える中、まさかの手違いにより前日が仕事になっており、寝ずに千葉から駆け付けた折橋選手。

万全とは言えない状況の中、果たして折橋選手はそうそうたるメンバーにどう立ち向かっていくのでしょうか!

フィジカル能力が試される。スキー場に設置されたコース

こんにちは。船橋松が丘店の折橋です!
当日入りにて参戦となった今回のレース、他選手と比べ十分な試走時間と回復が出来ないところが悔やまれますが、今回も気合を入れて望みます。

片道8時間ほどかけて午前10時ごろ現地到着。レース開始まであと4時間です。

出場するための自転車の準備、エントリー、着替え等をするため、今回は試走をする時間も多く取れないので使い慣れたチューブレスタイヤを選択し、空気圧はフロントは1.52bar、リアは1.54barに設定。

~ひとことメモ~ 細かい空気圧のセッティングで勝敗が決まるシクロクロスレース
シクロクロスのレースはコースや当日の天候によって路面の状況が大きく異なります。雨の翌日の場合、地面がぬかるんで足を取られたり、大きい石がゴロゴロ転がっている路面の場合、石に乗り上げてパンクしてしまうこともあります。そのため、本番前の試走で当日の路面状況を確認し、タイヤの空気圧を変えることで、トラブルを回避します。今回の場合、折橋選手は路面の石が比較的多いことに対応し、通常1.5bar前後で空気圧を設定しているところ、少し高めに設定して石に乗り上げた時にパンクしにくいようにしました。ただ、一般的に舗装路で走る場合は空気圧が高ければ高いほど前に進みやすいと言われていますが、オフロードの場合は細かい凹凸で自転車がはねてしまって思うように前に進みにくいというデメリットもあります。シクロクロスの選手はライドテクニックだけでなく、そのあたりの計算をしっかりすることが求められます。一見豪快に見えて、繊細で奥が深いスポーツですね~。

 

スキー場を使う2.5kmのこのコースは、前半は重たい芝生と凸凹がある路面が合わさった登り、後半は芝生の下に隠れた見えない砂利や段差を含む下り、というようなレイアウトで、オンオフがはっきり分かれており、また乗車困難な難しいエリアは少なく、どちらかというとフィジカルの能力の高さが求められるコース設定です。


関西シクロクロス公式HP 参照

長時間の運転の疲れはありますが、どれだけキツくても1時間で終わることがわかっているのがシクロクロスの良いところでもあり苦しいところでもあります。

~ひとことメモ~ 距離ではなく時間でゴールが決まる。シクロクロスのルール
シクロクロスは競技時間が最初から決まっており、折橋さんのカテゴリーであるElite Men(成人男子最高位カテゴリー)はおおよそ1時間が目安となっています。

むくんだ脚をマッサージでほぐしつつ、30分間のウォーミングアップを終えたのちスタート地点へ。

今回も上位入賞でポイントを獲得し、翌週に控える全日本選手権へ向け少しでも良い位置でスタートする事を目標に、招集ゾーンにて待機します。

スタートダッシュに出遅れる。巻き返しを図る折橋選手。

スタート地点に一人ずつ選手がスタンバイをはじめ、会場の音楽とともにメンバーのアナウンスが始まりました。
一列目には国内を代表するシクロクロッサーのほぼ全員が並んでおり、明らかに今までの大会とは雰囲気が違います。
2列目には現役プロロードレーサーや元ジュニアチャンピオンなどそうそうたるメンツの中、私は4列目からスタートを切ることになりました。

スタートは舗装路の登り。登りとは思えない圧倒的な速さで第一コーナーへ突っ込みます。

クリートキャッチに手間取った私は前半の登り区間を終えた時点で45番手前後とかなりポジションを落としてしましました。

このままだとトップと同一周回ゴールは厳しく、途中で足切りされてしまうのでは…と不安がよぎりますが、スタートで埋もれてしまった近くにいる有力選手とともに前を目指していきます。

しかし、経験も脚も私よりある選手たちはスルスルと前に上がってゆき、追いかけようにもすぐに見えない状態に…

体重の軽い私は下り区間で離されてしまうことが容易に想像できるため、なるべく登りがあるうちに、前に上がれるだけ上がっておきたかったのですが、なかなか上手くいきません。

ものすごいタイムをたたき出す先頭集団

でこぼこ道の下り区間、チェーン落ちやリム打ちパンクなどのトラブルに見舞われないよう慎重にこなし、コース終盤にあるシケインを終える頃にはトップの選手はすでに一周回を完了したとのアナウンス。

そのタイムはなんと6分40秒台!!
本日行われたあらゆるカテゴリーのレースのトップタイムより20秒近くも速いタイムで周回したことになります。

私の一周目の通過タイムは7分57秒だったため、トップから1分以上遅れてしまっており、このままのペースでいくとレース開始から40分前後の時点でレースから下されることになるとわかった私は2周目の時点でペースアップ。前の選手を猛追します。

~ひとことメモ~ どんどん足切りされる!80%ルールについて
シクロクロスには周回遅れの選手を抜かす際に接触等のトラブルを避けるため 80%ルールと呼ばれる制度があり、トップ選手が最初の一周で通過したラップタイムの80%のタイムを経過して周回した選手はレースを続行することができません。
(例えばトップが6分で周回した場合、基準となる地点から4分24秒経過するとアウト)

トラブル続出のレース模様。鋭い状況の確認と細かいライドテクニックが勝敗を分ける。

周りの選手が苦しくて踏みたがらない箇所全てを全力で踏み、2周目からのタイムは7分10秒台で推移。

そのおかげで順位も20番手台まで取り戻して行きました。

レース中盤に差し掛かるまでに、バイクトラブルに見舞われた選手だけでも数名を追い越します。前を走っていた有力選手ですらチェーン落ちやパンク等起こりうるので、いかに厳しいコースかが伺えます。

シケインでの飛び降り、飛び乗り際や、下りで細かい路面のギャップを通過する際などは特に注意が必要で、チェーンキャッチャー等を使っていようとも、衝撃で外れてしまうことがあります。

そのため、下りでもクランクを軽く回したり、シケインを通過する前にあらかじめギアを軽くし、再乗車の際に加速しやすくする、(=チェーンテンションを保てるのでチェーン落ちのリスクも減る)等の対策が必要です。

特に今回のコースは、登り返しなどが多いため、事前に加速しやすいギア設定にしておくなどといった対策は非常に有効です。

シクロクロスは、こういった細かい配慮が時として勝敗を分けることがあるのです。

脚が残っている者、そうでない者がはっきりと分かれる後半戦

レースも40分が経過し、明らかに脚が残っている選手と、そうでない選手が顕著になってきました。

7周完了時点のあたりから私はほぼ単独になり、前方にはJCX初戦、取手ステージにて圧倒的な脚力をみせた元全日本ロードチャンピオンの畑中選手の姿があります。

追いかけようとしますが、このコース名物の立体交差(フライオーバー)にて足が攣り、畑中選手との差が開いてしまいました。

後ろの選手とは約10秒差、ワンミスで追いつかれてしまう距離なのでこちらも一瞬も気を抜けません。

8周回目に入り少しでも力を入れると脚が攣りかける状態の中、上半身の力を使い路面の衝撃をいなしつつ、下り区間も慎重にこなしてゆきます。

最終周回へ入る頃には10数メートル先に前を走る選手の姿が見えますが、この差がなかなか縮まりません。

「今残っている力をこのコースのどこで使うと最良の結果になるか?」考えながら最後の周回を走ります。

残りの体力を考えると、たとえ登りで踏んでも前との差は詰められそうにありません。

前半の登り区間でオールアウトして下りでミスをするくらいならば90%ほどの力で、後ろの選手に追いつかれない程度の速度で登り、下りに備えて体力を残すことにしました。

あくまで本番は来週の全日本選手権。ここで無理して怪我はできません。

後続選手に差を詰められないよう、一定のペースで登って行き、最後の下りもミスしないよう落ち着いてこなし、最終コーナーを抜け最後の力を振り絞り、ゴールラインを通過。

前方の畑中選手とは、5秒ほどの遅れ、トップからは5分33秒遅れの20位で、レースを終えました。

来週は日本一を決めるレース。全力で頑張ります!

今回は74名中24名が完走、50名が途中で降ろされたことになり、その完走率は32%と全日本選手権の前哨戦の名に相応しい、ハイレベルなレースとなりました。

そんな中、途中ペースアップを図れたこと、後半のレースプランニングや、一度もバイクトラブルを起こすことなくレースを終えることができたのは自信へ繋がったかと思います。

いよいよ、次回は全日本選手権。

これまでのレースは全てトップと同一周回完走で終えており、日本一を決めるレースでも同じように走れるか不安はありますが、全力でチャレンジしていきます!

レポート:船橋松が丘店 折橋